オスグッド病とは? 膝の下が痛くなるメカニズムを解説

オスグッド病とは? 膝の下が痛くなるメカニズムを解説

柄澤 玄宏

監修

柄澤 玄宏

ゆらし療法についての臨床経験をもとに記事の医学的内容を確認しています。

「オスグッドですね。成長期によくあることです」——お子さんがそう診断されて、どうすればいいのか不安を感じている親御さんも多いでしょう。

この記事では、膝の中で何が起きているのか、なりやすい年齢やスポーツ、そして「成長痛」との違いまで、基本的な知識を整理します。

オスグッド病とは——膝の下で何が起きているのか

オスグッド病は、膝のお皿のすぐ下にある「脛骨粗面(けいこつそめん)」という骨の出っ張り部分に痛みが生じる疾患です。正式には「牽引型の骨端症」に分類されます。

太ももの前面にある大きな筋肉群(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))は、膝のお皿を経由して、腱によって脛骨粗面に付着しています。走る、ジャンプする、ボールを蹴るといった動作のたびに、この筋肉が収縮し、付着部を繰り返し引っ張ります。

成長期の骨はまだ完全に硬化しておらず、骨端線(こったんせん)(骨が伸びるための成長軟骨)が存在します。この柔らかい部分が筋肉の引っ張る力に耐えきれず、炎症を起こしたり軟骨が部分的に剥がれたりすることで痛みが発生します。これがオスグッド病の基本的なしくみです。

骨端線は、骨の長さの成長を担う重要な組織です。軟骨の細胞が増殖・成熟・石灰化というサイクルを繰り返すことで骨が伸びていきます。

この成長板は、大人の骨と比べて力に対する強度が低く、大人であれば腱や靭帯が傷むような力が、成長期の子どもでは骨端線に集中します。脛骨粗面の骨端線は腱の付着部と重なっているため、繰り返しの引っ張りを特に受けやすい構造になっています。

なお、オスグッド病と混同されやすい疾患として、膝蓋骨の下端(腱の「上側」の付着部)に痛みが生じるタイプの骨端症※1もあります。痛む場所が膝蓋骨の下端か、脛骨粗面かという違いがあり、治療の方向性も異なる場合があります。

オスグッド病のメカニズム:大腿四頭筋が脛骨粗面を繰り返し引っ張ることで痛みが発生する仕組み

なりやすい年齢とスポーツ

オスグッド病は10〜15歳の成長期に集中して発症します。従来の研究では男女比はおよそ3:1で男子に多いとされてきましたが、女子のスポーツ参加率が上がった現在では性差は縮まりつつあります。

ただし発症年齢には差があり、女子は男子より1〜2年早い傾向があります。これは女子の方が成長の急伸期(身長が1年で8〜10cm以上伸びるような時期)が早く来るためです。

両膝に同時あるいは時間差で発症するケースも珍しくなく、全体の2〜3割程度に及ぶこともあるとされています。片膝が痛み始めた数ヶ月後にもう片方も痛くなる、というパターンは典型的です。

スポーツリスクが高い動作
サッカーキック動作・ダッシュ・急停止
バスケットボール繰り返しのジャンプ・着地・方向転換
バレーボールスパイク時のジャンプ・ブロック着地
陸上競技短距離のスタート加速・跳躍種目
野球投球時の踏み込み・ベースランニング

つまり、共通するのは「太もも前面の筋肉に強い負荷がかかる動作の繰り返し」です。週に複数日の練習をこなし、休息日が少ないスケジュールの子どもほどリスクが高まります。

膝下の「出っ張り」は治るのか

オスグッドで見られる所見のひとつに、脛骨粗面の隆起——膝の下の「出っ張り」があります。ただし必ずしも全員に現れるわけではなく、特に発症初期には目立った隆起が確認できないことも少なくありません。進行した場合は触れると硬い骨の盛り上がりがわかります。

成長期の骨はまだ柔らかく、大腿四頭筋の強い牽引力によって脛骨粗面が持ち上げられます。早い段階であれば筋肉の緊張が解消されることで出っ張りが収まることもありますが、持ち上がった状態のまま骨が成長・硬化すると、出っ張りは固定されて元に戻らなくなります。

この出っ張りは骨の形状変化であるため、骨化が終わった(成長が止まった)後はその形のまま残ります。しかし、ここが大切なポイントなのですが——「出っ張りがあること」と「痛みがあること」は別の問題です。

大人になっても膝下の骨隆起が残ることがあります。隆起があっても症状のない人がいる一方、膝をついた時の不快感や運動時の痛みが続く人もいます。治療では、出っ張りの形だけでなく、痛みや日常生活への影響を確認します。

オスグッド病は成長に伴って症状が軽減することが多い一方、追跡研究では痛みやスポーツ活動への影響が長引く人も報告されています※2 ※3。長期的な経過には個人差があるため、症状が続く場合は「成長が終わるまで待つ」だけにせず、状態を確認することが大切です。

ごくまれに、剥がれた骨片(遊離小骨片(ゆうりしょうこっぺん))が大きく残り、腱との間で慢性的な摩擦や痛みを引き起こす場合があります。この場合に限り、外科的に小骨片を取り除く手術が検討されることがありますが、手術が必要になるのは全体のごく一部です。

オスグッドの出っ張り形成:脛骨粗面が隆起する過程と痛みとの関係

「成長痛」とは何が違うのか

「成長痛だから仕方ない」——オスグッドと診断された子どもの親御さんが最も多く聞く言葉かもしれません。しかし、医学的に言えばオスグッドと成長痛は異なる疾患です。

項目成長痛オスグッド病
痛む時間帯主に夜間運動中・運動後
痛む場所漠然とした広範囲の痛み脛骨粗面(膝下のピンポイント)
原因はっきりしない太もも前面の筋肉の牽引力
画像所見異常なし脛骨粗面の隆起・分離像
対処自然に治まることが多い筋肉の状態と動作の見直しが必要

一般に「成長痛」と呼ばれる痛みは、主に夜間に両脚へ繰り返し現れ、診察や画像検査で明らかな異常が見つからないものを指します。原因は一つに特定されていません。痛みが日中も続く、片側だけに強く出る、腫れや発熱を伴う場合は、別の病気がないか医療機関で確認する必要があります。

一方、オスグッドでは、大腿四頭筋から膝蓋腱を介して脛骨粗面に繰り返し牽引力がかかることが、主な発症メカニズムと考えられています。発症には成長の速さや運動量など複数の要因が関係するため、症状に応じた負荷調整やケアを行います。

また、膝前面の痛みを引き起こす疾患はオスグッド病だけではありません。膝蓋腱や膝蓋骨周辺の障害、骨や関節の病気など、ほかの原因でも似た症状がみられることがあります。

まれではありますが、骨腫瘍の可能性も完全には否定できないため、痛みが長期間改善しない場合や通常と異なる経過をたどる場合は、整形外科での精密検査を受けることが大切です。

同じ年齢・同じスポーツでも、なる子とならない子がいる理由

成長期の子どもが全員オスグッドになるわけではありません。同じチームで同じ練習量をこなしていても、なる子とならない子がいます。この違いはどこから来るのでしょうか。

大きな要因のひとつは太もも前面の筋肉の柔軟性です。骨の成長速度に筋肉の伸びが追いつかないと、筋肉が相対的に「短く・硬く」なり、付着部への引っ張る力が増します。成長の急伸期(身長が急激に伸びる時期)にリスクが高まるのはこのためです。

もうひとつの要因は身体の使い方です。着地やストップ動作で膝への負担が集中したり、股関節や体幹を十分に使えていなかったりすると、脛骨粗面への負荷が増えることがあります。

発症には、成長の速さ、運動量、筋肉の柔軟性、身体の使い方など複数の要因が関係します。オスグッドは激しいスポーツだけが原因ではなく、階段の昇り降りや自転車、椅子からの立ち上がりなど、日常生活で膝に繰り返し負担がかかることも症状に影響します。

まとめ——オスグッド病の基礎知識

オスグッド病は、成長期に骨の柔らかい部分が太もも前面の筋肉に繰り返し引っ張られることで起きる疾患です。10〜15歳に集中し、サッカー・バスケ・バレーなどジャンプやキックを伴うスポーツでリスクが高まります。

膝下の「出っ張り」は骨の形状変化として残ることがあります。成長に伴って痛みが軽減するケースは多い一方、症状が長引くこともあるため、痛みを我慢せず状態に応じた対応が必要です。

発症には成長の速さや運動量、太もも前面の筋肉の柔軟性、身体の使い方などが複合的に関係します。症状に応じて負荷を調整し、必要なケアに取り組むことが大切です。

柄澤 玄宏

監修

柄澤 玄宏(からさわ整形外科クリニック院長)

東京医科大学医学部卒業。同大学整形外科教室に入局後、東京医科大学霞ヶ浦病院、都立松沢病院などで整形外科診療に従事し、外来医長を務める。総合新川橋病院整形外科非常勤を経て、からさわ整形外科クリニック院長に就任。

日本整形外科学会認定専門医、日本医師会認定産業医。日本AKA研究会会員。

注釈

  • ※1 シンディング・ラーセン・ヨハンソン病(Sinding-Larsen-Johansson disease)。膝蓋骨の下端に痛みが生じる牽引型の骨端症。
  • ※2 Holden S, et al. Is the Prognosis of Osgood-Schlatter Poorer Than Anticipated? A Prospective Cohort Study With 24-Month Follow-up. Orthop J Sports Med. 2021;9(8). PMID: 34435066.
  • ※3 Guldhammer C, et al. Long-term Prognosis and Impact of Osgood-Schlatter Disease 4 Years After Diagnosis: A Retrospective Study. Orthop J Sports Med. 2019;7(10). PMID: 31700938.

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