
監修
柄澤 玄宏
ゆらし療法についての臨床経験をもとに記事の医学的内容を確認しています。
「成長期だから仕方ない。大人になれば治る」——オスグッドの診断を受けた親御さんが最もよく聞く言葉です。
でも、同じ年齢で同じスポーツをしている子の全員がオスグッドになるわけではありません。なる子とならない子の違いはどこにあるのでしょうか。
「成長痛だから仕方ない」は正しくない

確かにオスグッド病は成長期に多い症状です。骨の成長に筋肉・腱の発達が追いつかず、相対的に筋肉が「短い」状態になることがリスクを高めます。しかし成長は全員に起こる現象です。
12歳のサッカー少年が20人いて、全員が同じ練習量をこなしているのに、オスグッドになるのは数人だけ。この差を「成長」だけでは説明できません。成長は背景要因のひとつではありますが、直接の原因は別のところにあります。
つまり、複数の研究でも示されている通り、スポーツをしている子に偏って発症するという事実は、運動パターンと負荷の質が発症を左右する大きな要因であることを意味しています。もし成長だけが原因なら、運動の有無にかかわらず同じ割合で発症するはずです。
同じスポーツでも痛くなる子とならない子がいる
差を生んでいるのは体の使い方(動作パターン)です。具体的には、走る・跳ぶ・止まるといった動作の中で、膝にかかる負荷がどれだけ大きいかが問題になります。
同じ「ジャンプして着地する」動作でも、膝を深く曲げて衝撃を受け止める子と、股関節を使って体全体で衝撃を吸収する子がいます。前者は太もも前面の筋肉への負荷が集中し、脛骨粗面(けいこつそめん)(膝の下の骨の出っ張り部分)への引っ張りが大きくなります。
具体的な例を考えてみましょう。同じサッカーチームに所属する12歳のA君とB君。身長も体重もほぼ同じで、週4回の練習と週末の試合をこなしています。A君はオスグッドを発症し、B君は発症しませんでした。
もしこの二人の動作を分析したら、何が見えるでしょうか。A君はダッシュからの急停止で膝が前方に大きく突き出し、太もも前面の筋肉が強く収縮して止まっています。一方B君は、同じ急停止で腰を落として股関節を曲げ、体全体で減速しています。こうした小さな差の積み重ねが、1回の練習あたり数百回、数千回と繰り返されることで、脛骨粗面への負荷に決定的な差をもたらします。
膝主導と股関節主導——2つの動き方
スポーツの動作分析の分野では、下半身の動作パターンを大きく2つに分類します。
| 膝主導 | 股関節主導 | |
|---|---|---|
| 主に使う筋肉 | 太もも前面の筋肉 | お尻・太もも裏の筋肉 |
| 膝への負荷 | 大きい(脛骨粗面への引っ張りが強い) | 分散される |
| オスグッドリスク | 高い | 低い |
| 見た目の特徴 | スクワット時に膝がつま先より前に出やすい | お尻を後ろに引く動きが大きい |
人間の体で最も大きな筋肉はお尻の筋肉(大殿筋)です。ここを使えていれば負荷は体全体に分散されます。膝主導の子は、この大きな筋肉を十分に使えていないために、膝周りの比較的小さな筋肉に過大な負担がかかっている状態です。
もうひとつ注目すべきリスク要因として「膝の内側への倒れ込み(ニーイン)」があります。着地やスクワット動作で膝が内側に入ってしまうパターンです。膝が内側に倒れると、腱の引っ張る方向が偏り、脛骨粗面への力が不均一にかかります。
保護者の方でも簡易的な確認が可能です。お子さんに片足で浅いスクワットをさせてみてください。膝がつま先の方向よりも内側に倒れ込む場合は、お尻の横側の筋肉(中殿筋(ちゅうでんきん))の弱さや使い方の問題が疑われます。これは膝主導の動作パターンと密接に関連しており、オスグッド発症リスクを高める要因のひとつです。


なぜ膝主導の動きになるのか
膝主導の動作パターンは意識して身につけたものではなく、日常動作やスポーツの中で無意識に形成された「くせ」です。原因はさまざまですが、よく見られるのは以下のようなものです。
- 股関節周りの筋力不足——お尻や太もも裏の筋肉が弱いため、膝で代わりの動きをしてしまう
- 股関節の可動域制限——股関節が硬いと、スクワットやランジの動きで膝に負荷が集中する
- 幼少期からの動作習慣——指導者が「腰を落とせ」と指示しても、しゃがむ経験が乏しい現代の子どもは股関節の使い方が分からず、結果的に膝だけを前に出す動きになってしまうことがある
- スポーツ種目の特性——バスケのディフェンスなど膝を深く曲げる動作が多い種目は膝主導になりやすい
現代の子どもの生活環境も無視できない要因です。外遊びの機会が減り、座っている時間が長くなったことで、股関節を大きく動かす経験が不足しています。
木登り、鬼ごっこ、かけっこといった多方向への動きを含む遊びは、股関節周囲の筋力と可動域を自然に発達させます。こうした基礎的な身体能力が育たないまま、特定のスポーツの反復練習に入ると、股関節が使えず膝に頼る動きが固定されやすくなります。
加えて、この40年ほどで日本の生活様式は大きく変わりました。和式トイレは洋式に、畳の生活は椅子の生活に。「しゃがむ」動作が日常から消えたことで、子どもが股関節の深い屈曲を経験する機会は激減しています。

※ 動作パターンと発症の関係についてはまだ十分な大規模研究があるわけではなく、上記は臨床観察と運動学の知見に基づく考え方です。個々の子どもの状況は異なりますので、参考としてお読みください。
動作パターンの修正は可能か
結論から言えば、可能です。ただし一朝一夕にはいきません。
動作パターンは脳の運動プログラムとして記憶されています。「膝を曲げる」という無意識の動きを「股関節を使う」に書き換えるには、意識的な反復練習が必要です。
重要なのは、まず太もも前面の筋肉の過緊張を解消した上で動作修正を行うことです。筋肉が硬いまま動作パターンだけ変えようとしても、体が対応できず別の部位を痛めるリスクがあります。筋肉の状態を整えることと、動作パターンの修正は、セットで取り組む必要があります。
具体的な例としては、股関節から体を折り曲げる動き——この動きは「ヒップヒンジ」と呼ばれ、お辞儀をするように股関節を支点にして上体を前に倒す練習です。ほかにも片足立ちでのバランス保持などがあります。これらは痛みのない範囲で段階的に進めることが前提です。
つまり、動作パターンの修正は地味な取り組みですが、オスグッドの根本的な原因に向き合う方法です。目安として、意識的な練習を2〜4週間続けると新しい動きのパターンが定着し始め、やがてスポーツの場面でも自然に使えるようになっていきます。
まとめ——オスグッドと動作パターン
「成長痛だから仕方ない」は正確ではありません。成長はリスクの背景要因にすぎず、同じスポーツ・同じ練習量でも発症する子としない子がいるのは、動作パターンの違いが大きいからです。
膝主導の動きは脛骨粗面への負荷を集中させ、リスクを高めます。一方、股関節主導の動きは負荷を体全体に分散させます。膝の内側への倒れ込み(ニーイン)も簡易的に確認できるリスク要因です。
動作パターンの修正は可能で、2〜4週間の意識的な反復練習で定着し始めます。まず筋肉の状態を整え、それから動きを見直す。この順番が大切です。
監修
柄澤 玄宏(からさわ整形外科クリニック院長)
東京医科大学医学部卒業。同大学整形外科教室に入局後、東京医科大学霞ヶ浦病院、都立松沢病院などで整形外科診療に従事し、外来医長を務める。総合新川橋病院整形外科非常勤を経て、からさわ整形外科クリニック院長に就任。
日本整形外科学会認定専門医、日本医師会認定産業医。日本AKA研究会会員。





