ゆらし療法が効く人・効きにくい人——専門家が正直に語る

ゆらし療法が効く人・効きにくい人——専門家が正直に語る

柄澤 玄宏

監修

柄澤 玄宏(からさわ整形外科クリニック院長)

日本整形外科学会認定専門医。東京医科大学卒。

「自分の症状に合うのかな」「うちの子にも効くのかな」——ゆらし療法を検討する方が最初に抱く疑問でしょう。向いている人、向かない場合を率直にお答えします。

効果が出やすい人の特徴

ゆらし療法が得意とするのは大きく2つの群です。

さまざまな年代の人々:女性・中年男性・少年

1つ目は慢性的な痛みを抱えている人。薬を飲んでも通院しても3ヶ月以上改善しない。画像検査では「異常なし」と言われた。こういう方は筋肉の機能的な問題を抱えている可能性が高く、ゆらし療法の得意領域です。

2つ目は繰り返す急性の痛み。肉離れを毎シーズン起こす、ぎっくり腰が年に何回も出る——こういったケースは、根底に慢性的な筋緊張がある場合が多いです。

年齢層は幅広く対応しています。小学生のスポーツ障害(オスグッド・シュラッター病、シーバー病など成長期特有の症状)から、働き盛りの30〜50代の慢性腰痛・肩こり・頭痛、さらには60代以上の変形性膝関節症に伴う痛みや歩行困難まで。

施術の強度が極めて穏やかであるため、子供や高齢者でも安全に受けられるという特性があります。

慢性痛とは——3ヶ月以上続く痛み

慢性痛には医学的な定義があります。国際疼痛学会(こくさいとうつうがっかい)は2019年の改訂で、慢性痛を「3ヶ月以上持続する、または通常の治癒期間を超えて続く痛み」と定義しました※1

さらに世界保健機関(WHO)の国際疾病分類にも慢性痛が独立した疾患として収載されました。慢性痛が「気のせい」ではなく、医学的に認知された状態であることを示す重要な一歩です。

日本における慢性痛の有病率は成人の約22.5%※2と推定されています。つまり5人に1人以上が何らかの慢性的な痛みを抱えている計算です。にもかかわらず、適切な治療にたどり着けている人は一部に限られるとされています。

「3ヶ月以上」という基準は、骨折や一般的な軟部組織の損傷が治癒する標準的な期間に基づいています。

この期間を超えて痛みが続く場合、組織の損傷そのものは回復しているにもかかわらず、痛みを維持する別のメカニズムが働いている可能性があります。たとえば中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)(脳や脊髄が痛みに敏感になりすぎている状態)や、筋肉の慢性的な緊張です。

ゆらし療法は後者、特に筋肉の慢性的な緊張に対するアプローチとして位置づけられています。

器質的な損傷と機能的な痛みの違い

重要なのは「器質的(きしつてき)な損傷」(組織そのものが壊れている状態)と「機能的な痛み」(構造に異常がないのに痛みがある状態)の区別です。

器質的な損傷とは、骨が折れている、靱帯が断裂しているなど、組織そのものが壊れている状態。これは画像検査で確認でき、物理的な修復(固定、手術)が必要です。

一方、機能的な痛みとは、組織の構造に異常がないのに痛みがある状態です。機能性ディスペプシア(検査では何も見つからないのに胃が痛む)がその典型です。

他にも、緊張型頭痛(CTスキャンで異常なし)、過敏性腸症候群(内視鏡で異常なし)、線維筋痛症(全身の検査で異常なし)。いずれも検査では「異常なし」と言われるのに、本人は確かに痛みを感じている状態です。

ただし、この2つは完全に分離されるものではありません。たとえば骨折はまぎれもなく器質的な損傷ですが、ギプスで固定して安静にしていれば痛くない。痛みのトリガーは「動き」であり、それは筋肉の機能の問題です。

つまり、半月板が損傷していても痛みなく生活している人が大勢いるのは、痛みの原因が「構造の損傷」ではなく「筋肉の機能」にある場合が多いからです。

器質的な損傷と機能的な痛みの違い:構造の問題と筋肉の問題

対象外となるケース

ゆらし療法の対象外となるケース:

  • 出血を伴う外傷
  • 自力で立てない・歩けない状態
  • 嘔吐を伴う激しい頭痛
  • 原因不明の急激な症状(昨日まで普通だったのに朝起きたら激痛)

これらは迷わず医療機関を受診すべきです。ゆらし療法に限らず、どの手技療法でも同じ判断をすべき状態です。

なお、整形外科や他の治療を受けながらゆらし療法を併用することは可能です。たとえば、整形外科で経過観察中の半月板損傷に対して、ゆらし療法で周辺の筋緊張を緩和するといったケースは珍しくありません。

他の治療との併用を妨げるものではなく、むしろ「薬で炎症を抑えつつ、筋肉の機能的な問題にはゆらし療法でアプローチする」というように、役割分担ができる場合もあります。

不安がある場合の受け方

ゆらし療法は、強く押したり無理に動かしたりする施術ではありません。それでも、初めて受ける方が「本当に大丈夫かな」「自分に合うのかな」と不安に感じるのは自然なことです。

大切なのは、疑問を残したまま我慢して受けないことです。症状の経過、医療機関で受けた診断、現在の不安を事前に伝えていただくことで、施術の対象かどうかを確認しやすくなります。

説明を聞いても納得できない場合や、施術中に違和感がある場合は、その場で中止したり、医療機関での確認を優先したりしてかまいません。完全に信じ込む必要はなく、納得できる範囲で相談しながら進めることが大切です。

ゆらし療法側でも、対象外と判断される症状や、医師の診察が必要と考えられる症状については、施術よりも受診を優先する方針を取っています。

特に変化が見えやすい症状

肉離れは、ゆらし療法の特徴が最も端的に表れる症状かもしれません。組織が損傷しているのに短期間で日常動作が回復する——その変化の大きさが見えやすいためです。ただしこれは「得意」というより「差が見えやすい」という意味であり、慢性痛全般に対して幅広くアプローチできるのがゆらし療法の基本スタンスです。

スポーツの分野では、再発性の外傷が深刻な問題となっています。肉離れの再発率は特に高く、研究によっては30〜34%という数字も報告されています※3

これは単なる「不運」ではなく、初回の受傷後に筋肉が十分にリハビリされないまま競技に復帰してしまうことが一因とされています。つまり、「構造は治ったが動きが戻っていない」状態へのアプローチは、再発予防の観点からも重要なテーマです。

ゆらし療法の対象症状:慢性痛・肉離れ・オスグッドなど

まとめ——ゆらし療法が向いている人

ゆらし療法が得意とするのは、3ヶ月以上続く慢性的な痛みと、肉離れやぎっくり腰のように繰り返す急性の痛みです。大切なのは、「構造の損傷」と「機能の問題」を分けて考えること。検査で「異常なし」と言われたのに痛みが続く——それは筋肉の機能的な問題であり、ゆらし療法のアプローチが届く領域です。

もちろん、出血を伴う外傷や自力で歩けない状態など、まず医療機関を受診すべきケースもあります。不安や疑問がある場合は、症状の経過や医療機関での診断を伝えたうえで、納得できる範囲で相談しながら進めることが大切です。

「自分の症状に合うかどうか分からない」——その疑問を持ってこの記事にたどり着いた方こそ、一度体験してみる価値があるかもしれません。

柄澤 玄宏

監修

柄澤 玄宏(からさわ整形外科クリニック院長)

日本整形外科学会認定専門医。東京医科大学卒。

参考文献・ソース

  • ※1 国際疼痛学会(IASP). ICD-11 chronic pain classification, 2019.
  • ※2 矢吹省司ほか (2012). 日本における慢性疼痛の実態調査. 臨床整形外科, 47(2), 127-134.
  • ※3 Ekstrand, J., Hägglund, M., & Waldén, M. (2011). Epidemiology of muscle injuries in professional football (soccer). American Journal of Sports Medicine, 39(6), 1226-1232.

上記は本文中で引用・参照した研究・情報源です。

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